出典:Twitter
21日正午過ぎ、神戸市中央区にあるJR三宮駅前の県道で市バスが赤信号にかかわらず交差点に進入し、歩行者を轢くという事故が発生しました。この事故で20代の男女2名が死亡、ほか多数の重軽傷者が出ています。
この事故で現在、交通整理をする係員の制止を振り切って事故現場を撮影するカメラマンの行動が話題となっています。
報道メディアに通行を妨げる権利はあるのでしょうか。
カメラマンの素性を明らかにするとともに日本新聞協会の新聞倫理綱領に照らし合わせながら報道メディアの権利について併せてまとめましたのでご覧ください。
横断歩道で急発進
まず事故の概要についてですが、事故については産経新聞をはじめ各メディアが以下のように報道しています。
21日午後2時ごろ、神戸市中央区布引町のJR三ノ宮駅北側の兵庫県道で、神戸市営バスが赤信号の先の横断歩道に突っ込み、歩行者を次々とはねた。兵庫県警葺合(ふきあい)署によると、同県明石市の大学3年、柳井梨緒(やないりお)さん(20)と神戸市須磨区のアルバイト、那須勇成(ゆうせい)さん(23)の男女2人が死亡、20~50代の男女6人が重軽傷を負った。
同署は自動車運転処罰法違反(過失致死)の疑いで市交通局の運転手、大野二巳雄(ふみお)容疑者(64)を現行犯逮捕。「ブレーキを踏んでいたが急発進した」と供述しており、同署が詳しい事故原因を調べている。
現場は神戸市の繁華街で、JR三ノ宮駅北側のロータリーと阪急神戸三宮駅前を結ぶ東西の横断歩道。同署などによると、バスは神戸北町発三宮駅ターミナル前行きで、乗客は現場手前の地下鉄三宮駅前停留所で全員降りた。その後、駅南側の終点へ向かおうとしたバスが阪急電鉄の高架下横断歩道に突っ込み歩行者をはねたという。
市交通局は同日夕に記者会見し、内藤直樹自動車部長が「重大な事故を起こし心からおわびします」と謝罪。市交通局によると、大野容疑者には糖尿病の持病があったが、朝の点呼で異常は確認できなかった。
出典:産経新聞
この事故の3日前、東京都豊島区で高齢者が運転する乗用車が同様の事故を起こしたこともあり、インターネットを中心に波紋が広がっています。
逮捕された運転手
事故後、自動車運転処罰法違反(過失致死)の容疑で兵庫県警に現行犯逮捕されたのは大野二巳雄容疑者でした。
大野容疑者の現在までに明らかになっている情報は次の通りです。
名前:大野二巳雄(おおの ふみお)
年齢:64歳
職業:バス運転手
住所:兵庫県神戸市長田区房王寺町三
大野容疑者は1986年に神戸市バスの運転手として採用され30年以上バス事業に携わってきたベテランドライバーです。
過去に3件、乗客が怪我をする事故を起こしていますがアクセルとブレーキの踏み間違いが原因の事故はなかったようです。
またSNS上に逮捕時の様子を撮影していた方がいらっしゃいました。
神戸市営バス、歩行者多数はねる 2人心肺停止 / 共同通信
神戸市消防局によると、21日午後2時ごろ、神戸市中央区のJR三ノ宮駅近くの県道で、神戸市営バスが歩行者を多数はねたと119番があった。5人が負傷し、うち2人が心肺停止状態。
運転手が逮捕、手錠をかけられて連行。 pic.twitter.com/62l0p2P24T
— 大石鈴華 (@Kimi_Aloha808) 2019年4月21日
動画を観る限り大野容疑者は警察の受け答えにも首を振るなどリアクションをしており、意識がはっきりしている様子が伺えます。
また糖尿病の持病があったと報道では伝えられていますが、神戸市交通局によると出発前の朝の点呼でも体に問題はなかったようです。
現場は…
JR三宮駅前
事故は神戸市中央区にあるJR三ノ宮駅前の県道で発生しました。
ではどのように事故が発生したのか見てみましょう。
大野二巳雄容疑者が運転していたバスはまずこの停留所に停まっていました。
停留所では全ての乗客が降車したようでバスには運転する大野容疑者以外は載っておりませんでした。
目撃者の証言では乗客を降ろした後、バスはゆっくりと横断歩道に侵入しました。
横断歩道に侵入したバスは次々と歩行者を轢きました。
そして自転車をタイヤに巻き込んだバスはバランスを崩し右側にそれていき中央分離帯にぶつかったところで停車したようです。
現場は行きかう人の量も交通量も多い道路になります。特に信号も発見しにくい場所ではありませんので信号も見落としたということは考えにくいと思われます。
カメラマンは誰?
朝日新聞社?
事故が起きた直後、現場では事故の一報を映像に収めようとする報道メディアが殺到しました。その報道陣の中には通行を妨げるような行動を取ったカメラマンがいて、現在SNSを中心に非難が殺到しています。
信じられないような行動を取ったカメラマンの存在が明らかになったのは次の投稿からでした。
三ノ宮の事故、とある新聞の記者がやばい pic.twitter.com/EQ0J55VqeA
— 特撮好き@音ゲーやっている人 (@y9s10t7) 2019年4月21日
動画には交通整理をする神戸市交通局の係員と思われる男性と往来で脚立を広げ写真を撮るカメラマンのやり取りが記録されています。
動画のやり取りを文字に起こしてみましたのでご覧ください。
係員「あの、こうされると困るんですよ。(カメラマンとやり取り)いや、常識を持ってくださいね」
カメラマン「(払いのける仕草)」
係員「いや妨害とかじゃなくて、撮られるだけで他のお客様もおられる……ご理解、ご理解いただけます?」
カメラマン「見えない、見えない」
係員「怪我されることを…」
カメラマン「(背後を指さして)怪我って何もない」
係員「(※上手く聞き取れず)なのでもっと離れた位置から撮ってください危ないので。ご理解くださいね……いや止まられると、ここに止まられる方おるので止まるのなら別の場所に移動してください」
カメラマン「(事故を起こしたバスを指さして)見ればわかります」
係員「わかるのであれば移動してください」
カメラマンの男性は係員が制止しているにもかかわらず撮影を続行していました。
係員が撮影を制止している理由については他の歩行者も立ち止まる可能性があるから、と何回も繰り返し述べているので見てとれます。実際カメラマンの周囲には何人かの歩行者が立ち止まる様子も伺えました。
ではこのカメラマンの素性に迫ってみたいと思います。
カメラマンは左腕に黄色の腕章を身につけています。動画の一部にその腕章に記されている文字が映っていました。
出典:Twitter
”朝日”という文字と社章からカメラマンは朝日新聞社に所属する人間であることがわかり、さらにこの情報を基に朝日新聞で事故の記事を検索してみると撮影者の氏名も判明しました。
出典:朝日新聞
事件を伝える記事に挿入されている写真画像には撮影者の氏名が記載されています。
この事故を起こしたバスの画像でも氏名が右下にありますが、この写真は小川智という人物によって撮影されたようです。
小川智とはどのような人物であるのか、インターネットで検索を試みると小川智氏本人のSNSのアカウントが発見されました。
出典:Twitter
SNSのプロフィール欄には”朝日新聞映像報道部のカメラマン”と書き込んでありますので間違いないようです。
また、投稿された動画の中で映っていたカメラマンの背格好と比較しても非常に似ていることがわかるため、このことから事故現場にいたカメラマンと小川智氏は同一人物である可能性が高いと思われます。
出典:Twitter
メディアの権利
報道のためなら何してもいい?
報道資料を得るためなら通行を妨げることも厭わないこの小川智氏と見られるカメラマンの男性。確かに報道には国民に有益な情報を届けるために容疑者の名前を実名報道したりする権利というものは認められています。
では今回の通行を妨げる行為も報道メディアの権利として認められているのでしょうか。
多くの新聞社が所属する日本新聞協会には新聞社の倫理綱領というものを定めています。
自由と責任
表現の自由は人間の基本的権利であり、新聞は報道・論評の完全な自由を有する。それだけに行使にあたっては重い責任を自覚し、公共の利益を害することのないよう、十分に配慮しなければならない。
正確と公正
新聞は歴史の記録者であり、記者の任務は真実の追究である。報道は正確かつ公正でなければならず、記者個人の立場や信条に左右されてはならない。論評は世におもねらず、所信を貫くべきである。
独立と寛容
新聞は公正な言論のために独立を確保する。あらゆる勢力からの干渉を排するとともに、利用されないよう自戒しなければならない。他方、新聞は、自らと異なる意見であっても、正確・公正で責任ある言論には、すすんで紙面を提供する。
人権の尊重
新聞は人間の尊厳に最高の敬意を払い、個人の名誉を重んじプライバシーに配慮する。報道を誤ったときはすみやかに訂正し、正当な理由もなく相手の名誉を傷つけたと判断したときは、反論の機会を提供するなど、適切な措置を講じる。
品格と節度
公共的、文化的使命を果たすべき新聞は、いつでも、どこでも、だれもが、等しく読めるものでなければならない。記事、広告とも表現には品格を保つことが必要である。また、販売にあたっては節度と良識をもって人びとと接すべきである。
出典:日本新聞協会
倫理綱領に照らし合わせると公共の利益を害することはしてはならない、品格を保った記事、広告を保たなければならないといった内容が記載されていますがこのカメラマンの男性の行動は人々の通行を妨げ移動する権利を奪っているとともに、係員の制止を振り切るという品格どころか常識もない行動を取っています。
倫理綱領を見る限りではカメラマンの男性が取った行動は不適切だと言わざるを得ません。
報道メディアが成り立つのは国民があってこそだと思います。それにもかかわらず新聞社があるから国民は情報を得られるのだと勘違いしているメディアも多いのでしょう。
これは朝日新聞に限った話ではなく、今回の事故現場でもこのカメラマン以外にも制止を振り切って撮影を続行していたメディアがありました。
SNSなどで一般の人でも情報を発信が可能になった時代に報道メディアの存在意義を考えてみればこのような行動にも出られなくなるでしょう。
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