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大手住宅メーカーの積水ハウス(大阪市北区)が約63億円を支払った東京都内の土地取引で、警視庁は16日、偽造した書類を使ってこの土地の登記を変更しようとしたとして、羽毛田正美(はけたまさみ)容疑者らを逮捕しました。
地面師グループの女を逮捕
日経新聞ほか、メディア各局が以下のようなニュースを報じ、話題となっています。
東京都品川区の土地を購入しようとした積水ハウスが偽の地主にだまされて約55億円の詐欺被害に遭った事件で、警視庁捜査2課は16日、偽の書類を法務局に提出して土地の所有権を無断で移転登記しようとしたとして、土地所有者の女性になりすました職業不詳の羽毛田正美容疑者(63)=東京都足立区=ら数人を偽造有印私文書行使などの疑いで逮捕した。
同課は大型の「地面師」事件とみて捜査。事件に関与したとみられる男女計十数人の逮捕状を取得しており、残りのメンバーも順次逮捕する方針。主犯格の男1人は先週海外に出国し、別の地面師事件で収監中の男も事件に関与したとみられる。同課は積水ハウスに対する詐欺容疑も視野に、グループの役割分担や詐取金の流れを詳しく調べる。
土地は、品川区西五反田にある約2千平方メートルの旅館跡地。積水ハウスはマンション建設用地を取得するため2017年4月、仲介業者を介して所有者を名乗る女から土地を買い取る契約を締結。同年6月にかけて計63億円を支払った。
しかし土地の所有権移転登記をしようとしたところ、所有者側の提出書類が偽造と判明。登記申請は法務局に却下され、所有者を名乗る女とは連絡が取れなくなった。
積水ハウスは留保金をのぞく約55億5千万円を実質被害として特別損失に計上し、警視庁に刑事告訴。同庁は女を羽毛田容疑者と特定するとともに、取引に関わった関係者の事情聴取などを進めていた。
事件では、取引事故を防げなかった積水ハウスのコーポレート・ガバナンス(企業統治)の問題も浮上した。
積水ハウスの社外監査役・社外取締役でつくる委員会がまとめた報告書によると、営業担当者が仲介業者に取引を持ちかけられ、約1カ月後には土地の購入を会社として決断し契約。
その後、土地の所有者本人を名乗る人物から契約を否定する内容証明郵便が届き、グループ内からも取引の信用性に疑義を示す情報が寄せられたが、深く考慮されないまま代金の残金49億円の支払いに至っていた。
18年1月の取締役会では事件の責任問題などをめぐり和田勇会長(当時)と阿部俊則社長(同)が衝突し、互いの解職動議が出た。2月に会長に就いた阿部氏はガバナンス強化を優先課題に掲げている。
出典:日本経済新聞
羽毛田正美容疑者について
こちらが、逮捕された羽毛田正美容疑者のプロフィールです。
名前:羽毛田正美(はけた まさみ)
年齢:63歳
職業:不詳(地面師・詐欺師)
在住:東京都足立区
羽毛田正美容疑者は、カミンスカス・操容疑者などと共謀して、昨年6月1日に、東京都品川区西五反田2丁目にある旅館の跡地、およそ2千平方mを所有する女性になりすまし、さらに、所有者の名義を女性から別の不動産会社に変更する登記をするためだとして、偽りの委任状を東京法務局品川出張所に提出したとして逮捕された人物です。
ちなみに、こちらが逮捕された羽毛田容疑者の顔画像です。
出典:JNN
地面師とは?
では、地面師とは一体どのようなものなのでしょうか?
地面師とは、その土地の所有者になりすまして売買を装い、多額の購入代金を奪ったり、不動産をめぐる詐欺の手口の一つのことであり、それにまつわる詐欺師のことを指します。
多くは、第二次世界大戦後や1900年代のバブル期など、PCでの不動産登記や証明が確実に行えない時期に被害が多発しておりました。
登記簿や印鑑証明など権利関係の移転に必須な書類の電子化が進み、被害が無くなって行きましたが、今回の事件のように管理の行き届かない土地や所有者側の事情で表面化しにくい土地を中心に被害が発生しているのも事実です。
多くは、詐欺グループの一つが組織ぐるみで行なっていることがほとんどであり、今回の事件でも羽毛田容疑者が土地の所有者になりすましていた際には、パスポートなどの公的な証明書すらも偽造されていたのだと言います。
これに対して、積水ハウスの担当をした弁護士の話よれば、
全く思いませんでしたね。パスポートがあるんですよね。ペンライトでやると、浮かび上がってくるんですね。そこまで偽造されてたんで
出典:JNN
で、あるとのとです。
相当手の込んだ偽装をしていることがこちらかも伺えますし、やはり組織の力が働いていると考えていいでしょう。
現場は?
では、土地の所有を偽った現場は一体どこなのでしょうか?
報道機関の発表によれば、東京都品川区西五反田2丁目の旅館の跡地ということですが、こちらは、「日本観光旅館連盟 冷暖房バス付旅館 海喜館」という看板が出ており、もう何年も営業されておらず、一部からは「怪奇館」と揶揄されるほど、ただならぬ雰囲気と佇まいで幽霊屋敷のようになっているのです。
2006年頃までは、普通に宿泊できていたのだそうで、こちらのブログには部屋の様子や食事などについて詳しく書かれていますので、参考にしたい方はぜひご覧になってみるといいかもしれません。
そして、この海喜館が売買契約される際の契約書がこちらです。
積水ハウス売買契約日:4/24(同日売買予約の仮登記。総額70億円)
決済日:6/1(払済63億円)
所有権移転登記申請却下:6/9
本来の所有者から相続人への相続:6/24(7/4登記)
IKUTA所在地変更:6/29
上記仮登記の抹消(原因:解除):7/25登記
開示:8/2 pic.twitter.com/d0c96QaoV0— nots™ (@call_me_nots) 2017年8月2日
この海喜館の所有者としてなりすましていたのが羽毛田容疑者でありますし、あまりの巨額な地面師による詐欺であるだけに、積水ハウスの担当者が、この件に責任を感じてか自殺をしたなどの説も出ております。
いずれにしても、幽霊屋敷のような管理の行き届かない物件を対象に、こうした地面師がいまだに活動をしているという事件なだけに、一層の波紋が広がりそうな一件です。
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