宗教戦争は宗教上の理由のみならず、政治的な利権などが複雑に絡み合って起きる、戦争のことです。
全世界には無数とも呼べる宗教が存在しており、どの宗教が優れているのかを争って各地で戦争が起きています。
しかし、ここ日本においては多数存在している宗教同士で戦争が起きることはありません。
では一体なぜなのでしょうか?
TEDでのプレゼンテーション
「TED」という講演会を主催しているグループをご存知でしょうか?
「TED」とは”Technology Entertainment Design”の略で、年に一度、アメリカで開催されており、
世界をより良い場所にするために、世界に広がる価値のあるアイデアを発表する場所を設けています。
そんなTEDですが、2016年に京都で開催され、多くの日本人スピーカーがスピーチを繰り広げました。
その中でひときわ目立っていたのが、現役の僧侶である松山大耕さん。
松山さんは、お寺に生まれ育ちましたが、カトリックの学校に進学し、キリスト教の目下であるアイルランドに留学します。
その時、現地のB&B(ベッドアンドブレックファースト:宿泊と朝食の料金を含み、比較的安価で利用できる宿泊施設のこと)のスタッフの女性に言われた一言に全く反論することができなかったそうなのです。
「なぜあなたの国では、仏教徒の人がカトリックの学校に行くようなことができるの?
そんなことしたら、私の国では殺されても文句は言えないわよ」
このように言われたそうです。
日本は寛容な宗教国
日本人の宗教観は非常に独特です。
多くの日本人はハロウィンで仮装をし、キリストの誕生日であるクリスマスを祝い、大晦日にはお寺で除夜の鐘を聞き、年が明けたら神社に初詣に行くと思います。
他国から見れば、とても不思議がられますが、日本という国では、宗教の寛容性は一般的なのです。
宗教の違いは食の違いに似ている
さらに、松山さんは宗教の違いは食の違いに似ているとしています。
例えば、洋食のコース料理には必ず、メインディッシュがつきます。
しかし、和食にはこういったメインディッシュがないばかりか、そもそも、メインという考え方がないそうなのです。
日本の宗教においても、「ある特定の宗教だけを特別視するのではなくて、すべての宗教に共通する哲学、倫理観を日本人は大切にしている。」
と松山さんは考えています。
ですから、日本人の宗教観というのは、”Believe in something”ー何かを信じるではなくて、”Respect for something”ー尊敬するもしくは、”Respect for others”ー他者を敬うであるとしています。
日本で、仏教は日本にふさわしい形で洗練されてきました。
しかし、根底にあるのは創始者である、ブッダが唱えた素晴らしい教義と哲学に基づいているのです。
日本ではなぜ宗教戦争が起きないのか
宗教において、経典や戒律を忠実に守ることは大切です。
しかしながら、信じる宗教が違っていても、お互いを尊重し仲良くすることの方がもっと大切です。
1つの宗教を信じるがあまり、他の宗教と争ってしまうのは本末転倒です。
宗教の本質は、盲目的に一つのことを信じることではなく、感謝の気持ちを持って、安心感を得て自分の人生を全うすると願っている人々を手助けすることです。
つまり、宗教の本質とは安心感を与えることです。
そして、日本ではお互いの宗教が尊重しあうことで、人々に安心感を提供しているのです。
日本で宗教戦争が起きないのはそういった理由からなのです。
最後に
世界では色々な地域で、色々な人々が生活をしています。
それぞれ、文化や伝統は違うでしょう。
ですから、安心感を得られる方法は1つじゃなくていいのです。
色々な方法があって当然です。
松山さんによれば、このような日本の寛容な宗教観に対し、世界の宗教家たちが非常に期待を寄せているそうです。
スピーチの最後に、松山さんはこのような言葉を残しています。
「日本人の持つ素晴らしい寛容性のある宗教観を、世界に伝えたいと思います。
そうすれば、世界はもっと素晴らしくて素敵な場所になると私は強く信じています。」
松山さんと同じく、宗教戦争のない、平和な世の中が訪れることを願っています。
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